『女教師は二度抱かれた』@シアターコクーン・8/16(土)ソワレ

どうしても生芝居が観たくなったので行ってきたよ東京まで。
女教師は二度抱かれた』@シアターコクーン

<ストーリー(BunkamuraHPのあらすじにちょっと加筆)>
演劇界の風雲児と呼ばれる劇団の演出家・天久六郎(市川染五郎)は、歌舞伎界の異端児と注目されている女形・滝川栗之介(阿部サダヲ)とタッグを組み、新しい現代の歌舞伎を創造しようと、威勢よく狼煙を上げている。そんな前途洋々の彼の前に、高校時代の演劇部の顧問である女教師・山岸諒子(大竹しのぶ)が突然現われる・・・。
これは、壊そうと思っても壊れないものと、壊れてほしくないのに壊れていくものの物語である。

<感想・簡単バージョン>
面白かった。笑った。「笑って泣いて」というのとは根本的に違うけど、「笑って潜って」かな。松尾ちゃん、深いんだもん。3時間半の長さを感じたのは、割れそうになった私の尻くらいで、気持ち的にはあっという間。

すっとんきょーでありつつも、ひとかけらの怖さを秘めて登場する女教師・大竹しのぶが、どんどん微妙に壊れていくのが恐ろしい。凄い役者さんだよほんとにもう。でも、「狂気の演技」って役者にとってはおいしい、って聞いたことがあり、それはそれで分かる。
しかし役名が「山岸諒子」って(笑)。山岸凉子の作品世界にも通じる狂気は確かに感じたけれどね。女の狂気描かせたら天下一品やからねえ。『夜叉御前』とか『天人唐草』とかね。ぎえーーーーっ!!! 結局狂わないことには人間、業から解放されへんもんなんでしょうか。

市川染五郎は甘っちょろい新進演出家。ダメっぷりが真に迫る感じでとても上手い。風俗嬢に甘えるとこなんか「〜でしゅ」とか語尾がぐだぐだで、特別ファンってわけじゃなくてもちょっと萌えた。キュンとした。半裸シーンが何度もあるんだけど、脱いだらすごいよ。腹が…。ダメだよう鍛えとかなきゃ。

そして歌舞伎役者・タキクリ(女形)の阿部サダヲ。この役を染様じゃなくてサダヲが演じるのが面白い。設定が真正ホモだから、ハイテンションになるのはもう仕方がないんだけど(「ローテンションはおかまの天敵!」っていうセリフがあるほどに)、なんだかデジャブが。マタニティ堀内(『七人の恋人』)とかピンコちゃん(『誰よりもママを愛す』)がどうしても浮かんでしまうのよなー。まあでもサダヲに「オカマの演技の幅をもっと広げてよ!」って言うつもりもないんです。素晴らしい演技だったんです*1。安定感のある芝居、キレのある動き、ギャグの間、声の伸び、歌の上手さ、んもう、ゆるがない。ゆるがない演技巧者だからこそ、たとえばあえて崩すとか、破格な、乱調の美を見てみたかった気もする。歌舞伎界の異端児役なだけに。阿部サダヲという人が上手い役者さんすぎてもう期待のハードルが上がりまくってるのかもしれないけど、演出の都合もあるんだろうけど、そこを踏まえた上でなお、キャラの数だけいるサダヲが見たい。好きなのよサダヲ、それはわかって!

あと、音楽もよかったです。絶望の中に希望が…残って…んの???的パンドラの箱的歌詞は松尾スズキ。曲は出演もしている星野源ちゃん(オカマも演る。かわいすぎる)。SAKEROCKは「慰安旅行」しかしらなかったけど、聞いてみようかちら。

*1:でも、ひとりの男性につきオカマは1人しか入ってないことがわかった。心のオカマ袋の中にオカマキャラはひとつだけなんだね。源ちゃんのオカマぶりも見たことある感じだったし