原作・西村ミツル/マンガ・かわすみひろし『大使閣下の料理人(1)〜(17)』

やっぱり私はうんちく系の料理マンガが好きなんだなあ(『美味しんぼ』以外)。『美味しんぼ』は私にとって何がダメかって、あの「嘘くささ」だ。所詮マンガであるという時点で、全てのマンガは「マンガっぽい」ということになるのでもあろうが、私にとっては「マンガっぽさの中にある細かいリアリティー」こそが大事なので。それは登場人物の性格だったり、「料理対決」*1に至るまでのいきさつだったりいろいろだけど、とにかくそれがすんなり飲み込めるかどうか、どんなマンガでもそれに尽きる。以前に『サイコメトラーEIJI』の読後にも感じたことだけど、ちょっとした「嘘くささ」や「ありえない感」がそのお話をだいなしにすることもあるし、逆にカチッとした世界観がディテールから構築されていればそんな「マンガっぽさ」も気にならない場合もある。気にならないというより、単にマンガをマンガとして楽しめるというか。
そういうわけで「現代のタレーランとカレーム」と評される大使・倉木と料理人・大沢(こっちが主人公)が「食卓で繰り広げる外交」のお話であるこの作品は、「そんなにうまくいくかよ!」というマンガっぽさはもちろんあるものの、料理に関しても外交や国際政治に関しても細かいところ*2までツメられているので、とても面白く読めました。会議は踊る。ヤマ場は13巻、ベトナム大使館を離れる直前の、ベトナム共産党主席との設宴と、それに続く離任パーティのあたりでしょうか。主人公は情熱と技術を兼ね備えた料理人・大沢公だけど、実は倉木大使がスゴい人ですわ。倉木を見て育つ、若造・江口(17巻の時点で倉木大使の補佐役であるキャリア外交官)の今後の成長に期待。

それにしても、料理マンガは罪だ! 最近ロクな食事をしていないことに気付かされるじゃないか。あー「ちゃんとしたフレンチ」が食べたいコースで食べたい手の込んだのが食べたい最近全然食べてない!

*1:料理に優劣をつけようとするその手法はあんまり好きじゃないけど

*2:私に納得できる範囲で