中村うさぎ『私という病』
- 作者: 中村うさぎ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03/16
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 149回
- この商品を含むブログ (56件) を見る
うさぎさんにとって「私という病」は、そのまま「女という病」なのだと確認される本。つまり「女としての価値」をめぐって、日本社会で女のひとたちがどのような苦しみや葛藤を抱えているのかが、余すところなく描かれています。
何よりも自分がそのような葛藤を抱くに至った経緯について、フリーライター時代のセクハラ、ストーカー化していた痴漢、そして色恋営業をかけてきたホストがいかに屈辱的なセックスをしたかなどなど、嘘偽りなく(かどうかは知らないけれど、圧倒的な本音とともに)書かれている点に、中村うさぎの正直で高潔な人柄を見ました。
デリヘル体験に、共感してくれる女の人がいる一方で、いきなり見下した態度を取る男性がいたりというあたりは、そうだろうなぁと納得。
もちろん中村うさぎのとった行動は極端で異常。働く女が全てこんなことしてたらどエライ世の中になりますが、一方で私は「理解できなくもない」と思ったのだす。私自身が同じ闇に呑まれる心配や不安は今のところ無いけど、私はその闇の深さ暗さを知っているよ、と思ったの。経験則ではなく、なんつーか本能的にとでもいうか。同年代の働いてる女子は、いや、女という生き物ならば皆、程度の差こそあれおそらく「わかってしまう」ような気がする。逆にほとんどの男子は全く理解できない上に生理的に嫌がると思うけど(←この点に関しても、うさぎ嬢はきっちり分析してるので、本当は男子こそ読むべき本なのかもしれない。分かったところで楽しくないことは確かですが)。
中村うさぎなんて、買い物と整形とホスト狂いの、自分の病気を売りにした(これはあながち嘘ではないけども)露悪趣味の、嫌いじゃないけどワケのわからんヘンな人だと思ってた。東電OL事件も「昼はエリート、夜は立ちんぼって意味わかんね」としか思わなかった。でもこれ読んだら、彼女たちがそこへ至った道がはっきり見えたし、それは自分の立ってる地平と実は地続きのところにある道のひとつだと分かってしまったのでした。私は「東電OLは私だ」(オビより)とも「中村うさぎは私だ」とも思わないけれども、彼女たちがやらかしたことは、こう書いてしまうと陳腐ですが、「魂の救済を求める祈りの旅」なのだということは理解できる。自罰的な祈り。なんかね、ロードムービーを見たような気分になりました。監督はぜひラース=フォン・トリアーに。
まあ、立ち読みなんですけれども(皆ごめん)。