山岸涼子『イシス』

イシス (潮漫画文庫)

イシス (潮漫画文庫)

表題作は初見だったけど、同時収録の『ハトシェプスト』も『雨の訪問者』も文庫化されているやつじゃないかー! 持ってるっちゅーねん! まーいーや、『イシス』一作読むだけでも価値のあるぶんこ本でした。ハトシェプストの方は、実在した「古代エジプト王朝唯一の女ファラオ」の物語ですが、イシス*1は神話。この2作にしてもそうですが、山岸涼子は「女の生き様」を描くことが多いわけです。女の生き様というより「女の業」ね。不倫だとか、浮気だとか、嘘だとか、男の身勝手に翻弄される女の苦しみを描くわけです。そして女が最後にこのせりふを吐く「『女の業』だと人は言うけれど、その業を呼び活けるのは男ではないか。それならば、本当に業が深いのは男ではないのか」*2と。まーイシスの場合そこまで煮え煮えの業地獄ではありませんが。

*1:ご存じ、死者たちの王オシリス(犬頭)の妻にして太陽神ホルス(鷹頭)の母。だったと思う

*2:うろ覚えにつき確認後訂正します→→→確認しました。長いけど引用「そうなのだ "女の業"とは男の業によって呼び活けられるのだ 妻だけではあきたらない"男の業"によって では古来から言うところの業の深いのは 女ではなく男ではないのか …… いやそうではない 業とは男も女も等しくその身に持っているものなのだ そして業の行き着くさきには何もないことも、あの道で見たような気がする… それでもわたしは わたしは当分の間業をのり越えることなぞできそうもない」山岸涼子貴船の道』より。この短編が収録されているぶんこ『夜叉御前』は「煮え煮えの業地獄」がいっぱいつまったお買い得の一冊です